成年後見人とは「成年後見人の手続きと費用」成年後見の報酬

認知症と知的障害

「親が生きている間は、何とかする。けれど、親が死んだ後、この子はどうなるんだ?」

叔父の言葉です。

叔父の子ども(私の従兄弟)は、知的障害者です。

恋愛や結婚、就労で色々あったものの、従兄弟は工場に勤めてそれなりの日々を送っています。

けれど叔父は、自分の死後、我が子の財産管理などの「意思決定」が不安です。

そうした方々のために「成年後見制度」があります。

今回の記事で、不安解消のために「成年後見制度」の知識を得てみませんか?
また今後「成年後見人」を目指す方にとっても、有益な記事になっています。

成年後見制度とは

私の従兄弟のように、知的障害があり、物事を決定する能力が欠けている人がいます。
これを専門用語で「事理を弁識する能力を欠く状況」と言います。

成年後見制度を使用する目安として、2つの目的があります。

・本人だけでは契約や手続きが行えず、誰かに代行してほしい。
・詐欺などで財産が減らないように、財産を管理してほしい。

こられの目的を解決するために、成年後見制度が存在します。

その対象は知的障害者だけではなく、以下の方々になります。

  • 未成年(20歳未満)
  • 成年被後見人
  • 被保佐人
  • 被補助人

未成年(20歳未満)

20歳未満の方でも、結婚していれば成年とみなされ、成年後見の対象になりません。

原則:保護者の同意が無ければ、そもそも1人で行えません。

ただし、下記3点の例外は、取り消すことができません。

・単純な利益を得る、免れる行為
・財産の処分(お小遣いなど)
・保護者が許可した営業行為

一人で行った行為を取り消せるのか?

取り消せます。

ただし、全ての行為を”無効にできるわけではない”ので、注意が必要です。

相手方が「未成年だ」と知らずに契約した行為等を考慮してください。

誰が取り消すのか?

・未成年者本人
・法定代理人

保護者は誰になるのか?

・親権者
・未成年後見者
・法人

「親がいない場合は、児童養護施設の施設長」という認識で構いません。

成年被後見人

重度の知的障害者、精神障害者、認知症の方が対象となります。

家庭裁判所で後見を開始した方が対象です。

原則:日用品の購入など日常生活に関する行為以外は、取り消し可能です。

一人で行った行為を取り消せるのか?

取り消せます。

成年後被見人は意志決断力が低いと見なされ、後見人の了解の範囲で動いていないと判断されるからです。

誰が取り消すのか?

・本人
・成年後見人

保護者は誰になるのか?

成年後見人(=法定代理人)です。

被保佐人

精神障害や知的障害で、成年被後見人に次いで意思決定能力が低い方が対象です。

また家庭裁判所で、保佐開始の審判を受けた方に限ります。

原則:全ての取引を自分で行えると、見なされます。
よって、行為の取り消しは不可能です。

一人で行った行為を取り消せるのか?

以下の重要な取引だけ例外となり、取り消し可能です。

・借金をした
・借金の保証人になった
・相続を承認した
・不動産の取引を行った
・動産であっても重要なものの取引を行った
・建物の新築や増築

大きな金銭が絡む行為は、取り消し対象となります。

誰が取り消すのか?

・本人
・被保佐人

保護者は誰になるのか?

保佐人

被補助人

成年被保佐人に次いで、知的障害や精神障害により、意思決定能力が低いと見なされ方が対象です。

家庭裁判所により、被補助人の審判を受ける必要があります。

原則:当事者が申し出た範囲で家庭裁判所が法律の範囲内で決めた事項は取り消せます。

一人で行った行為を取り消せるのか?

取り消しが可能です。

あらかじめ、家庭裁判所が定めた事項に限ります。

誰が取り消すのか?

・本人
・被補助人

保護者は誰になるのか?

・本人
・被補助人

成年後見人とは

成年後見人とは、ご本人に代わって財産の保護や身の上の監護を行う人のことです。

「ご本人」とは、知的障害や精神障害、認知症などで意思決定能力が著しく欠けた人のことです。

成年後見人が選任されると、家庭裁判所の監督のもと、本人に代わって契約や財産の管理を行います。

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成年後見人になれる人

成年後見人には通常、個人が選ばれます。
本人の親や親族など、身内が後見人になるケースが多いです。

最近は、弁護士が成年後見人になるケースが増えてきました。

私がMSW(医療ソーシャルワーカー)を行っていた頃、認知症の方の後見人に弁護士が着任しました。

看護師が弁護士に「オムツが無いので届けてください」とナースステーションから電話していました。

また、生活保護CWを行っていた際も、知的障害者の後見人に弁護士が就任しました。

弁護士が後見人になったことで、下記のとおり物事が円滑に進み、生活保護を脱却することができました。

・生活保護受給者Aさんは施設にいるため、自宅と土地は不要
・土地と自宅を売却したので生活保護を止めてほしい

法人でも、社会福祉協議会やNPO法人が後見人になっている場合もあります。

成年後見人になれない人

以下の方は、成年後見人になれません。

家庭裁判所が、許可をしないからです。

・未成年(結婚していない人)

・家庭裁判所で親権喪失の審判を下された人

・保佐人や補助人であったが、家庭裁判所で解任された人

・破産をした人(免責決定を受けていない人)

・被後見人に対し裁判を起こしたことがある人

・行方不明の人

成年後見人の手続き

家庭裁判所への申立て

まず成年後見人を選ぶために、家庭裁判所に「後見開始の審判」を申し立てます。
必要なモノ

・医師の診断書
・後見人になる人

成年後見人選任の申し立てに必要な書類

・審判申立書
・本人の戸籍謄本、住民票
・成年後見人の住民票
・被後見人が成年後見人として登記されていないことの証明書(法務局で取得可能)
・後見人の財産の目録

選任の申し立て後

家庭裁判所の調査官が、調査を行います。
本人や後見人候補者と面談して、生活状況や経緯などを把握します。

この調査で、医師による鑑定が必要とみなされる場合があります。
この場合は鑑定費用として5~20万円が必要になります。

※実際は医師の診断書があるため、鑑定が必要となるケースは少ないです。

成年後見人の費用

必要書類

5000円~2万円程度。
・戸籍謄本
・医師の診断書
・裁判所に納める手数料(収入印紙や郵便切手)

弁護に依頼する場合

弁護士会の手続きの費用は10万円~30万円と幅があります。

親族に後見人を依頼する場合の目安は、0~6万円/月です。

弁護士や司法書士ですと、目安は2〜6万円/月です。

成年後見人の報酬

成年後見人の報酬は「後払い方式」です。
1年を経過した時点で、家庭裁判所の裁判官が決定します。
この決定には、後見人からの申立を受けて、判断します。

後見人が継続となった場合でも、1年毎の後払い方式です。

この方式では報酬が明確にならず、後見人の成り手がいません。

そこで「東京家庭裁判所・立川支部」が平成25年1月1日付けで「成年後見人等の報酬額の目安」を公表しました。
成年後見人の報酬の目安1

終わりに

成年後見制度で、「他人に管理されるのは嫌だ」「報酬が払えない」といった方へ「家族信託」も登場しました。

成年後見制度も、2種類あります。
・法定後見:家庭裁判所が後見人を選びます
・任意後見:元気なうちに、本人が後見人を選びます。

成年後見制度も多様化し、利用しやすくなってきました。

障害があろうと無かろうと、1人1人の意思は尊重されるべきであり、財産は守られて当然です。

ご心配な方はぜひ、無料で相談できる「法テラス」や社会福祉協議会を利用してください。

裁判所がYouTubeにアップした成年後見に関する動画を貼っておくので、ぜひ参考にしてください。
ビデオ「わかりやすい成年後見制度の手続」 本編 音声解説付き
ABEMAの公式サイトはこちらから

従兄弟のように成年後見制度を活用し、将来の不安を無くして、活き活きとした人生を送ってください。

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