「もうおねがい ゆるして ください」
5歳だった船戸結愛(ゆあ)さん、その最後の言葉でした。
2018年3月、東京都目黒区のアパートで結愛さんは「お腹が痛い、お腹が痛い」と苦しみながら亡くなりました。
腹痛を訴えた結愛さんでしたが、病魔に犯されていたわけではありません。
なぜ罪のない5歳の少女は、苦しみながら死ななければならなかったのか?
大人達はなぜ、結愛さんを死なせてしまったのか?
そして今、私達にできることは何なのでしょうか?
結愛さんの死を忘れず、そして「no more yua」のために当時を振り返りながら「今の取り組み」を見ていきましょう。
なぜ「こども庁」が必要なのか?――児相の脆さが露呈
結愛さんが非業の死を遂げた原因の1つに、自治体間の引継ぎ――児相の引継ぎが充分に行われず、虐待への対応が後手に回った点が挙げられます。
「では、児相の引継ぎをしっかりやればいいのではないか?」
こういった指摘は的を射ていますが、事はそう簡単ではありません。
我が国で児童を扱う省庁は、厚労省・文科省・内閣府とバラバラです。
・厚労省:保育園、学童保育、病気
・文科省:幼稚園、学校
・内閣府:子育て支援対策、認定こども園
霞ヶ関のお家芸である「縦割り行政」で子どもへの支援がまとまらず、育児をしている私達にとっても非常に分かりづらいのが現状です。
酷似した背景から誕生した「デジタル庁」と同じく、子ども行政を一本化させるため、子ども庁が早ければ2022年に産声を上げます。
こども庁には、以下の点が期待されています。
・子育てや教育格差の解消
・児童虐待への対応
・不妊治療の拡大
・いじめ対策
・認定こども園の拡充
・産前・産後支援
私が市役所で家庭相談を行っていた頃、保育園の虐待は保育係、小学校は学校担当部署と縦割りで連携に苦労しました。
行政が一本化されれば確かに、子どもの援助洩れは減少するでしょう。
しかし予算と人員を奪われる厚労省・文科省・内閣府からの抵抗が予想され、予断を許しません。
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子ども庁に反対の言い分は?
2001年の中央省庁等改革で、厚労省や国交省など「デカイ役所」が誕生しました。
こども庁に反対する方々の言い分を紹介する際、「デカイ役所」からどれだけ権限を子ども庁へ移転させられるかが争点となります。
認定こども園は愚策だ
保育園は厚労省、幼稚園は文科省。
この分かりにくい縦割り行政を是正して一元化しょうとしましたが、結果は内閣府が所管する「認定こども園の誕生」という、さらに縦割り行政を加速させるものでした。
つまり子ども庁を創設する際には、厚労省の保育園、文科省の幼稚園、内閣府の認定こども園と、3つの施策を取り上げる必要があります。
人員も予算も膨大なので、現実的ではない――これが反対派の方々の言い分です。
逆に子ども庁創設で保育行政の一元化が図れれば、未就学児への支援が一元化されるため、一本筋の通った施策を打てます。
ただしこの点が実現しても、まだ大きく2つ、乗り越えるべきハードルがあります。
省庁横断型の会議の行く末
会長・議長を首相が務める省庁横断型の会議が3つあります。
①少子化社会対策会議
②子ども・若者育成支援推進本部
③子どもの貧困対策会議
どれも重要な会議ですが、これらの機能を子ども庁に完全移転した場合、新設された子ども庁の職員で捌けるのか?という点が指摘されています。
また、子ども庁を有名無実化される、さらに深刻な問題が転がっています。
地方自治体との整合性
霞ヶ関が子ども施策を一元化しても、地方では児童福祉課に学校教育課と相変わらず子ども施策が二本化されており、連携は困難を極めます。
「地方自治体も一元化すればいい」と声が聞こえていますが、地方の方が弾力性がありません。
県庁や市役所では、各部署のパワーゲームが強烈です。
学童保育1つ取っても、児童福祉課と学校教育課で押し付け合いです。
さらに児童虐待で大きな役割を果たす主任児童委員の担当は他部署と、縦割りが強烈です。
知事や市長は”大統領制”(直接選挙)で選ばれるため、権限は国会議員よりも強いと言われています。
子ども庁が創設されたからといって、地方が一斉に「右に倣え」をすするからといえば、全く現実的ではありません。
つまり東京が一元化を図っても、地方は知らん顔――絵に描いた餅に終わるリスクを孕んでいます。
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デジタル庁と子ども庁の違いとは?
似た背景で誕生したのが「デジタル庁」です。
内閣官房IT総合戦略室、厚労省のコロナ早期発見アプリ「COCOA」、さらに総務省のマイナンバー運用など、縦割りどころかカオスと化したIT行政を一元化するために誕生しました。
しかしデジタル庁は、子ども庁ほど複雑ではありません。
デジタル庁の母体はIT総合戦略室で、もともと調整組織でした。
また各省庁は、デジタル化を活用する側であり、基本的に横並びの関係です。
子ども庁との大きな違いは、民間人の登用です。
デジタル庁の職員は約600人で、うち約200人が民間から採用されました。
またデジタル庁のトップであるデジタル監には、経営学者の石倉洋子一橋大名誉教授が起用されています。
こうした民間人登用により、ITゼネコンと呼ばれる巨大で小回りが効かない企業の排除などが期待されています。
デジタル庁がすんなりと生まれた背景には、平井卓也・デジタル改革担当大臣の推進力が大きくモノをいいました。
平井大臣はIT行政の第一人者で、強烈なリーダーシップを発揮し、デジタル庁創設までこぎつけました。
子ども庁においては、そうした推進力があるリーダー不在が悩ましい点です。
【デジタル庁】「この国がダメになる危機感」脅し発言はホンネ?平井卓也大臣が恨まれても実現したいイノベーションとは?ITゼネコンのベンダーロックイン問題を考える|#アベプラ《アベマで放送中》
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こども庁の職員になるには?取るべき資格と突破すべき試験
こども庁発足が現実味を帯びてきており、入庁を希望する方が増えていくでしょう。
専門色が強い役所ですので、入庁前に取得しくに越したことが無い資格があります。
まず第一は福祉を浅く広くカバーする社会福祉士です。
児童福祉だけではなく、困窮や障害もカバーする社会福祉士は持っていて当たり前の資格といっても過言ではありません。
88%が働きながら合格を勝ち取っているので、短時間で勉強が終わり、孤独になりません。
また保育士の資格も、必須といえるでしょう。
特に児童福祉において、保育士で得た知識や経験は必ず行政で役に立ちます。
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そして最後に、公務員試験に合格する必要があります。
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何にせよ、子ども庁の目的が「no more yua」ではあることを忘れてはいけません。
船戸結愛(ゆあ)さんのように衰弱死する子どもが二度と出ないよう、目に見える結果が求められます。
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