相模原での痛ましい事件に、YouTuberによる生活保護受給者やホームレスへの激しい攻撃。
この両事件に共通しているのが「優生思想」です。
身近で起きた凶悪な事件と言論ですが、「優生思想」が聞きなれない言葉であることも事実です。
優生思想は「優生学」という学問に基づいています。
私達の生存権と人権を直ちに脅かす「優生思想」を理解して、自分の命を守りましょう。
またそれは、他人の命を尊重することにも繋がります。
本当に優しい世界の実現に向けて、準備できる記事です。
優生思想とは
肉体面や精神面で優れた人が、その原因を「自分の遺伝子だ」と仮定します。
ここまではあくまで「仮説」なので、実害はありません。
問題は「自分が優れているのは、自分の遺伝子だ」と仮定した人間たちが、それを「真実」だと思い込み、他者を攻撃するからです。
それは時に行動であり、時に言論であったりします。
では具体的にどういった行動や言論があるのでしょうか?
自分の優秀な遺伝子だけを後世に残そうと考え、他の遺伝子を排除しようとします。
歴史においては、ナチスによる命の選別にも使われました。
日本における身近な事件では、神奈川県相模原市の障害者施設での痛ましい事件があります。
また2021年8月7日、「インフルエンサー」と呼ばれる発信力のあるYouTuberが「優生思想」に基づく発言を行ったことで、物議を醸しました。
相模原45人殺傷事件
2016年7月26日、神奈川県相模原市で残虐な事件が発生しました。
事件の舞台となったのは知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」でした。
26日未明に、津久井やまゆり園の元施設職員が施設に侵入しました。
19人の尊い命が犠牲になりました。
また26人が重軽傷を負いました。
この事件は戦後の日本において、最も多くの命を奪った事件です。
この事件の犯人は次のように述べています。
「意思疎通のできない障害者は、社会に不要である。重度障害者の命を奪えば、世界平和に繋がる」
理解不能な動機ですが、直視せねばなりません。
こうした「弱者の排除」が優生思想です。
即ち、自分より劣る遺伝子の持ち主を社会から排除しようとするのです。
事件当時、「施設職員は何をしていたのか?」と勘違いな意見が散見されました。
私は5年間、生活保護受給者が入所する「救護施設」で勤務していました。
当然、夜勤もありました。
当時は早番もなく、4人の夜勤スタッフで200人の入所者を支援する体制でした。
200人の入所者がいる施設は広大です。
また夜間は施錠していましたが、窓ガラスを破られれば、簡単に侵入されてしまいます。
4人の夜勤者では火災時に入所者を避難させるのが精一杯で、侵入した犯罪者の対応などできません。
警察に通報しても、警察官が到着するまで、犯行を防ぐ術はありません。
多くの入所施設が恐怖のどん底に叩き落された、凶悪犯罪です。
しかし、この事件を機に、施設の人員配置を見直すという話を、私は把握していません。
常に施設の現場はギリギリの人員配置で、福祉援助を行っているのが現状です。
メンタリスト・DaiGoのYouTube
メンタリストを自称するDaiGo氏は自身のYouTubeにて、以下のような発言を行いました。
- 生活保護のために税金を納めていない
- 生活保護受給者より猫を救ってほしい
- 自分にとって必要がない命は、軽い
- ホームレスの命はどうでもいい
この発言が問題となり、DaiGo氏は謝罪を行いました。
私は基本的に「謝罪」を評価する人間です。
「謝る」ことは、勇気が必要です。
同時に「謝ること」は、自分の非を認めることであり、立派な行為だと思っています。
また人間なので、口が滑ることもあるでしょう。
ただし今回の件は、DaiGo氏が何を言っても空虚です。
例えば「謝罪」でDaiGo氏は、こう述べています。
・一生懸命、社会復帰を目指して生活保護を受けながら頑張っている人、支援する人がいる
・僕が猫を保護しているのとまったく同じ感覚で助けたいと思っている人、そこから抜け出したいと思っている人に対して、さすがにあの言い方はちょっとよくなかった
猫を飼う飼わないは個人の自由なので、言及しません。
私達福祉職は日夜、少ない人員と予算の中、心身をすり減らして福祉援助を行っています。
時間と金銭に余裕がある方がペットを飼うのとは、次元が違います。
福祉職は日々、現場で弱者の「生命と人権」を守っています。
その現場は過酷を極めます。
私は首に軽度のヘルニアを負い、未だに睡眠薬無しでは眠れません。
福祉の現場で綺麗事は通用せず、重たい責任と高い職業倫理、深い知識と実践経験が求められます。
そのような福祉の現場を経験した私にとって、DaiGo氏の一連の発言は到底、容認できません。
今回の発言は一線を越えており、「謝って済む」という範疇を越えています。
そもそも彼は自ら「発言の根底には『優生思想』があった」と吐露しています。
「思想」を変えることは、非常に困難だと考えます。
むしろ私達は、優生思想の持ち主達がいる現実に目を向け、「自衛すること」が求められています。
優生学とは
優生学は1883年にフランシス・ゴルトンが定義した造語です。
優生学の中身は以下の通りです。
・生物の遺伝を改良し人類の進歩を促す。
・これは科学的社会改良運動である。
分かりにくいので、具体的な事件を見ていきましょう。
- ナチスによる非人道的行為
- 1971年、オランダにおけるポストマ医師安楽死事件
「2」ですが、「安楽死」と「優生学」が混同されたため、安楽死の法定化に時間がかかったと言われています。
優生学肯定論者
「私の遺伝子は優れているので、劣っている遺伝子は排除する」と危険な思想・学問ですが、肯定している人達がいます。
例えば日本では「ハンセン病」の方々への「隔離施策」があります。
疾病への無知に端を発し、ハンセン病の方々を「治る病気」であるにも関わらず、「怖い病気」と思い込み、隔離しました。
憲法学者の見解では、ハンセン病の方々への隔離についても「優生思想」があったとの解釈があります。
また海外でも、優生思想による悲劇が起きているとの指摘があります。
アメリカのヴァージニア州では1924年、精神障害者への不妊手術が決定されてしまいました。
終わりに
「優生思想の標的は社会的弱者だから、自分には無関係」だと思われますか?
1秒後、私達は交通事故で身体障害者になるかもしれません。
1秒後、私達は認知症になるかもしれません。
若年性認知症はすでに発生しており、全年齢が対象です。
つまり全ての国民が「社会保障」の対象になり得るのです。
優生思想は他人事ではなく、我が事です。
自分や大切に思う人が幸せな人生を送るために、「優しさ」に満ちた世界を構築したいですよね(^^♪
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