2021年8月7日、メンタリスト・DaiGo氏がYouTubeに「優生思想」に基づく発言を行いました。
これに対して、生活困窮者支援4団体が8月15日、緊急声明を出す異例の事態に発展しています。
DaiGo氏の発言の危険性から、緊急声明は止むを得ない処置であると判断します。
私は生活保護受給者が生活する「救護施設」で勤務し、生活保護CWの経験もあります。
生活保護という最後のセーフティネット、そして生活保護受給者の生存権や人権が脅かされた以上、今回の事件は取り上げます。
この記事の目的は以下のとおりです。
・生活困窮者の生存権と人権を守る
・優生思想を持つ者の本音
・生活困窮支援に取り組む団体の紹介
DaiGo発言とは
2012年8月7日、メンタリストのDaiGo氏は自身のYouTubeにて、優生思想に基づき、以下のような発言を行いました。
- 生活保護の人たちにお金を払うために税金を納めない
- 生活保護の人に食わせる金があるんだったら猫を救って
- 生活保護の人が生きてても別に得しない
- 人間の命と猫の命はね、人間の命の方が重いなんて思ってない
- 自分にとって必要のない命は、僕にとって軽い
- ホームレスはいない方がいい
〇1について
生活保護は、働きたくても疾病や障害で働けない方への制度です。
「公的扶助」といいます。
生活保護費は当然のことながら全額、国家予算で賄われます。
「生活保護」は他人事だと思いますか?
私が勤務していた救護施設では、薬物中毒やDVの被害者、記憶喪失の方がいました。
それぞれの背景はありますが、私が現場で感じたのは「明日は我が身」でした。
1秒後、交通事故で働けなくなるかもしれません。
1秒後、後天性の疾病を発病するかもしれません。
1秒後のことは、誰にも分かりません。
明るい出来事も暗い出来事も、両方が起きる可能性があります。
公的扶助は最悪の事態を想定して設計されています。
「公的扶助」の代表である「生活保護」は、「現在」と「未来」への不安解消システムとして稼働しているのです。
「生活保護は他人事ではない」
これが結論です。
〇2について
猫を可愛がたりければ、自由に可愛がってください。
しかし、今回の件で引き合いに出された全ての猫に、同情を禁じ得ません。
〇3について
では仮に、生活保護受給者の命が奪われたらどうなるのでしょうか?
犯罪として純粋に、あってはならないことです。
そしてこのような事態が発生すれば「生活保護が機能していない」と認知され、国民が混乱の渦に叩き込まれます。
景気の回復が思うように進まない昨今、大勢の国民が日々、不安のなかで生活しています。
その不安が爆発しないように、たとえ受給しなくても、「生活保護」というシステムは必要なのです。
〇4について
猫の命の重さは測ったことが無いので、何グラムなのか分かりません。
分かっている人間はいないでしょう。
同じく、人間の命も測れません。
「命の重さ軽さ」は軽々しく、口にしてはいけません。
苦しいこと・辛いことがあっても、一人一人が必死に生きています。
私だって5年半に及ぶ不妊治療、適応障害、公務員退職と、人生ハードモードです。
それぞれの「猫」に、それぞれの背景があるでしょう。
等しく、それぞれの「人間」にも背景があります。
命の重さに言及するのは止めましょう。
直ちに、生存権を脅かす事態になります。
実際にDaiGo氏の発言は「優生思想」に基づくものであり、私達の生存権を直接に脅かしています。
〇5について
私の知らない「山田さん」がいたとします。
「山田さん」は、朝食のパンを作ってくれたかもしれません。
「山田さん」は、私が今着ている服を作ってくれたかもしれません。
「山田さん」は、水道や電力など、インフラの整備を行っているかもしれません。
綺麗事ではなく、私が知らない多くの人間が、私の生活を支えてくれています。
社会とは、人間の集合体です。
人間の集合体とは即ち、「助け合い」の「集まり」です。
多くの「知らない人」の貢献によって、1人の人生は成立しています。
そうである以上、驕りを捨てて、謙虚に生きることが求められます。
〇6について
皆さんは「ホームレスになりたい!」と思ったことはありますか?
小学校の卒業文集で「将来の夢はホームレス」と書いたことがありますか?
ホームレスになりたくて、なっているわけではありません。
ホームレスになった背景は様々でしょうが、「労働」や「家族」、「コミニュティ」、またこれが合わさった結果、ホームレスになった方々がいます。
ホームレスもまた、他人事ではありません。
救護施設で働いていた頃、ホームレスだった入所者がいました。
その入所達の背景を見ても「知的障害」「精神障害」「脳の疾病」「犯罪」と多様です。
これらは「後天性」の要因もあり、1秒後、私達の身に起きても不思議でありません。
「想像の翼」を、どこまでも広げてください。
1秒後、自分はどうなっているのか?
悲観する必要はありません。
難しく考える必要もありません。
「他人の身になって考えよう」
小学校で習う、この基本的なことができていれば、何ら問題はありません。
逆に言えば、俗に「インフルエンサー」と呼ばれる発言力のある大人でさえ、この「義務教育で習うこと」が出来てない――このことが明るみに出た一件でした。
生活困窮者自立支援制度とは
耳慣れない言葉かもしれませんが、「生活困窮者自立支援制度」は私達が生きていく上で、とても大きな「助け」になってくれます。
私が生活保護CWだった頃、この制度の利用者は多くいました。
各制度を見ていきますが、説明だと曖昧なので、私が生活保護cWだった頃、どのように運営していたのか?――具体例でお示しします。
自立相談支援事業
私が勤務していた市役所が、社会福祉法人に委託していました。
障害や貧困で生活が立ち行かなくなった方々の、自立までの「地図」を作る作業です。
この工程ではスタッフに、「社会資源」の深い知識と実践が求められます。
また委託といっても、市役所とのコラボです。
月に1回ミーティングを開催し、意思疎通をスムーズに行って、具体的な支援を構築していました。
住居確保給付金の支給
賃貸の方の家賃を補助する制度です。
新型感染症の影響が直撃したのが、この制度です。
新型感染症の数倍にのぼる申請が届いたと記憶しています。
なお、所得による制限があります。
就労準備支援事業
ハローワークと連携して実施していました。
ハローワークに専任のスタッフがいて、月1回はミーティングを行っていました。
私が勤めていた福祉事務所では、専任スタッフのフットワークが軽く、頻繁に電話や対面で情報交換を行い、支援していました。
家計改善支援事業
制度の利用者に、家計簿をつけてもらいます。
その家計簿を3人のファイナンルプランシャーにマネジメントしてもらいました。
貧困対策の一環のため、生活費の無駄遣いを防ぐのが目的でした。
生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業
公民館で実施していました。
対象家庭の児童が学校の帰りに公民館に寄って、元教師の方に勉強を見てもらっていました。
月に1回、報告書が上がってきました。
僅かですが報酬が発生する「ボラバイト」でした。
一時生活支援事業
私が福祉事務所で、担当していました。
住居を失ってしまった方に、あらかじめ契約したホテルで宿泊してもらう――という制度です。
期限を決めた宿泊であり、「終の棲家」ではありません。
利用者は住居を見つけ、生活保護を利用しながら、生活の立て直しをはかっていました。
生活保護問題対策全国会議とは
生活保護の研究・実践に特化した団体です。
書籍の発行など、生活保護の啓蒙を行っている団体です。
一般社団法人つくろい東京ファンドとは
「公的扶助」を網羅的に支援する団体です。
生活保護を筆頭に、貧困に取り組んでいます。
新型感染症の支援も行っています。
新型コロナ災害緊急アクションとは
「無料定額宿泊所」に強い団体――との印象を受けます。
「反貧困」を掲げています。
一般社団法人反貧困ネットワークとは
「反貧困」に取り組む団体です。
「ゴールデンウィーク大人食堂」など、ユニークな取り組みが目にとまりました。
終わりに
今回の騒動は「たった1人」が発信したものかもしれません。
「その1人が偶然、インフルエンサーだったから」と感じる方もいるでしょう。
1人であれ複数であれ、生存権を脅かしていい道理はありません。
インフルエンサーで何であれ、ヘイトを言語化していい道理もまた、ありません。
私は「生きています」。
あなたも「生きています」。
見知らぬ誰かも「生きています」。
その「生存」は誰であれ、脅かしていいはずがありません。
この時代に求められているのは「想像」かもしれませんね。
「想像」する「余裕」が、私達の生活に必要なのではないでしょうか?
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