救護施設とは「救護施設の費用と実態」更生施設や刑務所との違い

困窮「公的扶助と生活保護」

「生活保護を受給しているのに、立派な建物に住んで!」
「生活保護を受給しているのに、個室に住んで!」
「生活保護を受給しているのに、旅行に行くなんて!」

大阪府高槻市にある救護施設「高槻温心寮」で働いていたとき、聞こえてきた言葉です。

私の返答は、たった1つでした。

「では、あなたも生活保護を受けて、救護施設で暮らしてみますか?」

メンタリストDaiGoが「優生思想」丸出しでYouTubeで攻撃したことから、「生活保護を受給すること」 について考えるキッカケが生まれました。

とはいえ実際に、生活保護を受給した経験のある人は、ごく少数です。

まして「救護施設で暮らした経験」を持つ人を探すのは、倫理観のあるYouTuberを見つけるほど、ミッション・インポッシブルです。

そこで今回は、5年間働いた私が秘密のベールに包まれた「救護施設」のツアーガイドを務めます。

記事の前半は「お利口さん」で堅苦しくて読む気が失せますが、後半は綺麗事抜きで剥き出しの救護施設をご紹介しますので、ツアーを最後までお楽しみください。

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救護施設とは

聞き慣れない「救護施設」という言葉ですが、「法律の定義」と「実際の運用」は、やや異なります。

救護施設とは「法律の定義」

社会福祉士法の「第一種社会福祉事業」と「生活保護法」によって定義されています。

話が逸れますが「第一種社会福祉事業と言われても『何のこっちゃ?』」ですよね?

福祉の中でも、施設サービスが第一種社会福祉事業にあたります。
それ以外が、第二種社会福祉事業です。

ちなみに「社会福祉士」の国家試験はとっても意地悪なので、 下記の例外が出題されます。

赤十字の募金事業⇒第一種社会福祉事業(施設サービスに負けず劣らず「重要だ!」という理由です)

無料低額宿泊所⇒第二種社会福祉事業(「一次的に泊るだけじゃね?」という扱い)

救護施設とは「実際の運用」

生活保護を受給していても、障害や疾病が原因で自宅で生活できない人が入所します。

私が「高槻温心寮」という救護施設で働いていた時は、入所者の状態や背景は様々でした。

・高齢で介護が必要な人
・介護は必要ないけど、知的障害で身の回りのことができない人
・介護不要で知的障害も無いけど、精神障害があって、自宅生活を送らせると最悪、自殺する可能性がある人

大きく、この3つのカテゴリーに分けることができます。

とはいえ、救護施設は本当に色々な人生を送っている方がいます。

・元殺し屋で網走刑務所に入っていたことがある人
・記憶喪失の人
・知的障害でホームレスだった人
・覚醒剤中毒だった若者
・ 暴力団からのスカウトが怖くて、放火して逮捕された人

※個人情報に配慮して「フェイク」をかけています。

未成年は児童養護施設に入所しますが、成人した生活保護受給者は救護施設に入所するので、児童福祉以外の福祉サービスの知識と実践経験を得ることができます。

それだけ救護施設で働くことは「修羅場」と言い換えることもできます。

救護施設と更生施設との違い

生活保護の施設は5種類あります。
それぞれを説明しながら「救護施設」と「更生施設」を比べてみてください……ほぼ、違いなんてありませんけど。

救護施設

体か精神の障害が重いので、一人暮らしが不可能な人が入所する施設です。
生活保護の施設といえば「救護施設」だと思ってもらって間違いないです。

更生施設

入所条件は救護施設と同じですが、あくまで「社会復帰」を目的としています。

実際問題、生活保護を受給してなお、施設に入所する必要があるのに「社会復帰」なんて可能なのか? という疑問は学生時代から解消されていません。

救護施設と更生施設の違いなど、運営している社会福祉法人がどう位置づけているかだけで、現場の援助で違いなど1ミリも無いと考えていただいて構いません。

救護施設の入所者であっても「日常生活自立支援促進事業」とか何とか、舌を噛みそうな名前の援助を通して、生活保護を脱出した人はいます。

生活保護の施設は他に「宿泊提供施設」「宿泊所」「日常生活支援住居施設」があります。

昔は「授産施設」と「医療保護施設」という名称が存在していましたが、幽霊部員みたいなものなので、考える必要はありません。

社会福祉士を受験するにあたって「救護施設」と「更生施設」の違いを割と真剣に考えている人は

・重度の人の終の住処(すみか)が救護施設
・生活保護を卒業したい人の腕試しの場が更生施設

程度に覚えておけば、充分です。

繰り返しになりますが、実際には救護施設と更生施設の違いなどありません。
運営している福祉法人の経営者が、好みで決めているだけです。

救護施設の費用

生活保護を受けている人で「救護施設に入所したい!」と計画を練っている人には、朗報です。

救護施設に入ったところで、入所費用や家賃、医療費を取られることはありません。

後で説明しますが、救護施設の生活は窮屈ですよ?

「酒とパチンコは諦めてください」

と言われた時点で、入所する気を無くしたでしょ?

しかも、生活保護受給者が施設入所すると、保護費を支給していた自治体の手間は膨大となり、予算も飛んでいくため、そう簡単には入所できないかも……です。

生活保護を受けていても「老人ホーム」に入所できるか?

生活保護を受けていても「老人ホーム」 に入所は可能です。

まずは担当の生活保護ケースワーカーに、施設入所を相談してからの話になりますが。

老人ホームといっても、生活保護を受けている方が入所できるのは「特別養護老人ホーム」がメインになります。

「老人保健施設」や「有料老人ホーム」は費用が高いので、入所した実例を聞いたことがありません。

特別養護老人ホームに入所するには「要介護3」が必要です。
さらに入所待ちの行列に並んで、順番が来るのを待ちましょう。

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家系ラーメンよりも長い行列ですが、順番は待ちましょう。

特別養護老人ホームの待機も終盤に差し掛かると「入所」が先か「お迎えが来る」のが先かのチキン・レースが展開されます。

どちらも確実に順番は来るので、行政にブーブー言わずに黙って待ちましょう。

間違っても勝手に「貯金して有料老人ホームに入りました」という事態は避けてください。

福祉事務所によっては「有料老人ホームに入所できるだけの貯金があった」という事実だけで、保護費が割高になって返還請求されます。

最近、生活保護費の不正受給者が続々と逮捕されています。

酒とパチンコが3度の飯より好きなそこのあなた、他人事ではありませんよ?

救護施設の実態

「働くのも家賃払うのも嫌だし、生活保護もらって救護施設に入所するか」

こんな甘い考えを持っている方に、救護施設の至極当たり前の常識をお伝えします。

起床時間は絶対

少ない夜勤人数で入所者全員の朝食を準備し、服薬介助までしないといけないので、起床時間は絶対に守ってもらいます。

「早起きして酒を買いに行っているし、パチンコの行列に並んでいるわい!」
という方なら、大丈夫かもしれません。

昼寝の時間が制限される

睡眠薬を服用している入居者が多いので、時と場合によっては昼寝していると叩き起こされます。

生活保護ケースワーカーだった当時、家庭訪問すると、ハローワークに行かずに昼間っから酒を飲んで寝ている受給者がいました。

生活保護の受給者全員が、こんな体たらくではありません。
悪質な受給者はごく一部ですが、 その一部のせいで、受給者全員が色眼鏡で見られてしまいます。

おやつが制限される

自分の息子か娘ほどの年齢の職員に「何で菓子パンを食べているの!?」と怒られます。

職員が意地悪をしているわけではなく、糖尿病の入所者が多いため、医者の指示に従って「おやつ」を制限しています。

事情はどうあれ「生き別れになった自分の子供と同じ年代」の職員に「菓子パンは食べちゃダメ! 菓子パンを他の入所者に買ってきてもらうのもダメ!」と怒られます。

ドM気質ならまだしも、常人なら「何だかなぁ」という人生を送る羽目になります。

酒は論外

今時はどこの救護施設でも、酒は厳禁です。

酔っ払って入浴して、命を失った入所者がいます。
酔っ払った入所者同士が、喧嘩をしたことがあります。
酔っ払った入所者が転倒して、骨折したことがあります。

そもそも施設入所はアル中対策として「酒を断つ」という意味合いが大きいのです。

逆に「酒がOK」 という救護施設があれば、 そこの施設長にこう言ってやりたいです。

「入所者がアルコール中毒になったら、責任を取れるんですか?」

「入所者が酔っ払って命を落としたら、責任を取れますか?」

消灯時間は絶対「夜の番組が最後まで見れない」

施設というのは、団体生活です。
そこには必ず、一定のルールがあります。

私が現役だった頃は、200人の入所者に対して、夜勤者は4人でした。
1対50とかいう無理ゲーでした。

生活保護の施設に限らず、施設には必ず消灯時間があります。

夜、見たい番組があっても、最後まで見れません。

大好きな映画がテレビで放送していたとしても、プロ野球中継が伸びれば、最後まで見ることはできません。

生活保護を受給しながら「3食屋根付き」の、これが現実です。

作業は意外と充実

施設によって差はありますが、日中の作業やクラブ活動は充実しています。

本格的な陶芸の「釜」を持っている施設もあるぐらいです。

作業で作った物が売れれば、お小遣いがもらえます。

私が印象的だったのは、隔週土曜日に開催される「麻雀サークル」を楽しみにしていた入所者の存在です。
※賭け麻雀ではありません

日中の作業やクラブ活動では、普段は関わりがない他の入居者と仲良くなれるため、退屈な救護施設の生活において、充実した時間になります 。

救護施設と刑務所の違い

①番号で呼ばれません
②暴力は振るわれません
③ 職員に逮捕権と捜査権がありません
④暴力団員の数は、施設によって差があります
⑤「詐欺師からスキルを学ぼう」は無駄です。上等なスキルを持った詐欺師はそもそも、生活保護生活に入りません。逮捕されて刑務所にブチ込まれることはあるでしょうが。
⑥ 死刑執行室がありません
⑦面会は割と自由です
⑧刑務所ほど「運動」は意識していません
⑨脱走は驚くほど簡単です
⑩救護施設入所では「箔」はつきません
⑪救護施設を出る日が来ても若い衆が「お勤めご苦労様でした!」とは言ってくれません
⑫異性がいます!

終わりに

救護施設の利用者が旅行に行くと、非難する声が上がります。

ちょっと冷静になりませんか?

生活保護はそもそも「最低限度の生活」しか保障していません。

そんな生活保護受給者よりも「生活のレベル」が低いのであれば、あなたの生活が「最低限度」ではありません。

救護施設の入所者の旅行をなくせば、厚生労働省は喜びます。
国家予算の支出が減るからです。

ところで。
救護施設の利用者から「旅行」を奪ったとして、あなたの給料が上がりますか?

救護施設の利用者を罵ることで、 あなたの休日が増えますか?

「優生思想」の持ち主に影響を受けて、生活保護受給者を叩いたところで、あなたは何か「得」をしますか?

一時の鬱憤が晴れたところで、 どうせストレスは溜まり、 他の攻撃相手を探すだけです。

そんな「優生思想」の持ち主が増えれば、その「攻撃対象」にあなたが含まれる可能性は高くなります。

自分で自分を大切にするためにも、ヘイトは捨てて、生産性が高い言動を取った方がいいです。

自分や自分が大切に思っている人のために「自分の人生よ、楽しくなーれ♪」と考えた方が、幸せになれる打率は高くなるよなぁ――とか考えている昨今です。

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