「名探偵のままでいて」あらすじネタバレ解説:探偵は認知症の高齢者

「名探偵のままでいて」あらすじネタバレ解説:探偵は認知症の高齢者 小説
「名探偵のままでいて」あらすじネタバレ解説:探偵は認知症の高齢者

「名探偵のままでいて」は第21回このミステリーがすごい大賞を受賞した日常系ミステリーです。

殺人は基本的に起こらず(例外あり)、ほのぼのテイストなので、ライトな読者層にお薦めできます。

とはいえ、本格ミステリーの王道である”安楽椅子探偵”が登場するので、本格志向の方もご満足の一品です。

何より本作の特徴となっているのが、何と探偵役が……認知症を患う高齢者なのです。

認知症の高齢者と孫娘が、日常に潜む謎を時に知的に、そして時に危険を顧みずに解決ていきます。

今回はそんな本作の魅力をお伝えします。

最後に作者の小西マサテル先生のご紹介がありますので、最後までお楽しみください。

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「名探偵のままでいて」あらすじ

「名探偵のままでいて」あらすじ紹介とネタバレ解説

「名探偵のままでいて」あらすじ紹介とネタバレ解説

引用:event.1242.com

楓は小学校の教師で、ミステリーマニアです。

マニアの原因は、祖父から受けた影響でした。

その祖父は……”レビー小体認知症”を患っています。

彼は元小学校の校長で、知性は非常に高いのです。

しかし認知症が原因で、幻視をよく見てしまいます。

そんな二人は果たして、日常に潜む謎をどうやって解決するのでしょうか?

第一章・緋色の脳細胞

楓は故・瀬戸川猛資氏の評論集を手に入れます。

しかし、その本には四枚の紙が。

それは全て、瀬戸川氏の訃報を知らせる新聞紙の切り抜きでした。

一体だれがどんな目的で、これらの切り抜き記事を本に挟んだのでしょうか?

第二章・居酒屋の”密室”

楓は同僚の岩田から恋心を抱かれています。

そんな岩田に食事に誘われました。

しかし二人きりではなく、四季という舞台役者が一緒でした。

四季によると――。

居酒屋で、密室状態となった男性トイレで人が殺されたというのです。

この居酒屋では被害者が殺害された当時、客達はテレビのサッカー中継に夢中で、誰もトイレに立っていません。

……と、客達は警察に語っています。

第一目撃者の男性(四季の友人で俳優仲間)が居酒屋の女将に報告に行くと、彼女は「スパイス風味」の料理を考えていたとか……。

女将は、その”スパイス風味の料理”レシピを書きかけたメモを破るほど、動転していた……。

楓と祖父は、密室殺人の謎を解けるのでしょうか?

第三章・プールの”人間消失”

楓は大学時代の同期と飲んでいました。

同期が勤める学校で、不思議な事件が発生しました。

同期がいる小学校に美しい女教師がやってきます。

彼女は水泳が得意でした。

そんな彼女が小学生に、水泳を教えていました。

そして水泳の授業が終わり、誰かが水に飛び込む音が……。

そして、その女教師は忽然と姿を消してしまったのです。

学校側は彼女の父親に報告したものの、彼は行方不明届を提出しませんでした……。

楓と祖父は、消えた女教師を発見できるのでしょうか?

第四章・33人いる!

楓のクラスは6年生で、卒業が間近です。

そのクラスにいる特徴的な3人を、楓はハリーポッター風に、ハリー、ロン、ハーマイオイニーと呼んでいました。

ある日、楓はクラスで英会話を実施します。

しかしハリーがなぜか、怖い話大会を提案、実行する運びに。

そしてハリーは、この学校が防空壕の跡地であったことを語ります。

涼しくなる教室。

そして楓は、”32人”の生徒たちを二人一組にさせ、英会話をさせます。

楓「二人か三人でグループになって、英語以外は使用禁止」

そう告げられた生徒たちは、それでも楽しそうに英会話を始めたのでした。

ところが。

ロンとハーマイオイニーのコンビが口論を始めます。

何でも、日本語が聞こえたというのです。

それは女の声で、何やら涙声だったと……。

32人しかいないはずのクラスに、33人目がいる……!

楓からこの話を聞いた祖父は、果たして33人目の謎を解けるのでしょうか?

第五章・まぼろしの女

楓の同僚・岩田が警察に逮捕!

事件は、彼がランニング中に発生しました。

中年男が若い男が揉みあいになり、若い男は刺されてしまいます。

岩田が驚いて被害者を抱きかかえると、彼は異様なほど、汗をかいていました。

そこへ、なぜかタイミングよく警察官が現れ、岩田を逮捕してしまいました。

岩田は、被害者の体に刺さった包丁を握りしめてしまっていたのです。

その現場を目撃していた女がいました。

彼女とは楓も出会っていました。

楓の彼女への印象は”ウォーキングママ”。

ウォーキングママは楓達と会ったとき、口を両手で押さえていました……。

しかし、その女は警察官が来るやいなや姿をくらましてしまったのでした。

しかもウォーキングママの目撃者を探しても、誰も知らないと……。

岩田の送検が迫ります。

果たして、楓と祖父は目撃者の女を見つけ、岩田の無罪を勝ち取れるのでしょうか?

そして、事件の真相とは?

終章・ストーカーの謎

楓に付きまとうストーカー。

彼の正体に楓は全く見当がつきません。

しかし、彼は楓に電話はしてくるし、住所まで知っています。

楓は警察に相談するも、門前払い。

しかしストーカからは「準備はできている」と電話が――。

楓は祖父に相談します。

そしてストーカーが、ついに姿を現します。

後ろから楓を拘束、薬で意識を奪います。

気が付くと、楓は祖父の家にいました。

隣室では、祖父が言語聴覚士の”親バカ”から、リハビリを受けている最中でした。

薬の麻痺で、楓は身動きができません。

しかし、隣室の祖父に助けを求めねば――。

果たして楓と祖父は、この窮地を乗り越えられるのでしょうか?

未読の方へ

次章と感想はネタバレになりますので、未読の方は最後の作者紹介に飛んでください。

ぜひ本作をご覧になったうえで、次章をお楽しみくださいね。

「名探偵のままでいて」ネタバレ解説


各章ごとに、ネタバレ解説を行います。

未読の方は飛ばして、最後の作者紹介までワープをお願いします。

第一章・緋色の脳細胞

祖父は楓に、名推理を披露しました。

祖父
「本の所有者はすでに亡くなっている」

「彼は生前、大好きな瀬戸川猛資氏の訃報記事を、哀惜の念を込め、大切にしている本の中に挟みこんでいたのだ」

「彼の死後、奥さんはそれを知らずに中古の書店に売ったのだよ」

……無理筋は気はしますが、一応、筋道は立っているでしょう。

”彼”と、男性限定にしている点について、祖父はこう述べました。

「配偶者が亡くなったとき、冷静な対応が取れるのは、女性の方だよ」

「僕なんかは、妻に先立たれたとき、何もできなかった」

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こう言われると、逆らえませんね。

第一章は”読者への挨拶”という感じです。

祖父が自分の意見を披露するというより、楓の推理を筋道立てて潰す……という意味合いが濃いです。

第二章・居酒屋の”密室”

祖父は楓に、かつてポニー&クライドという男女の窃盗団が跳梁跋扈していたと説明します。
(作者さん、後だしジャンケンですよ?)

女将は、そのポニー(運動神経抜群)だとも。

クライドが出所して、女将を強請るために現れたのです。

女将はクライドとの話し合を、トイレ前の廊下で行ったものの、交渉決裂。

逆上したクライドが、女将と揉みあいに。

そこに現れたのが、四季の友人で、彼は女将に恋心を寄せていたのです。
(後出しジャンケンが多過ぎです)

友人はクライドから包丁を取り上げ、背中を刺します。

この時点でまだ息があったクライドが暴れたため、女将は彼を男性トイレに突き飛ばします。

衝撃で包丁が深く刺さり、彼は絶命。

友人から遅れて、女将は何食わぬ顔で戻ってきたのです。

女将が出てきても、客達は彼女がトイレを使っていたとは思いません。
(仕事でトイレの掃除などを行っていたと考えた)

ちなみに女将は運動神経抜群なので、男性トイレに鍵をかけた後、上の隙間から抜け出したのです。

こうして、密室が出来上がったのでした。

友人は女将に恋心を寄せていたので、彼女の身代わりになってしまったのです……。

”スパイス風味の料理”は、女将が時間稼ぎのため、トイレの張り紙として”故障”=”こしょう”と書いている途中だったのでした。

かなり苦しい話の展開ですが、伏線はそれなりになった第二章でした。

第三章・プールの”人間消失”

祖父はまず、女教師がいる学校の校長が若くて美しい女性であることを楓に説明します。
(この説には伏線がいくつもあり、納得)

そして終盤にプールに飛び込んだのは、女教師ではないとも。

飛び込んだのは、イタズラ好きな小学生でした。
(あるある、です)

しかし、その小学生は騒ぎに驚き、名乗り出ることができません。

こうして、人間消失が起きました。

原因が恋愛問題なら、校長が女教師を謀殺したことになります。
(校長室の位置的に、犯行可能なのは校長だけ)

しかし、原因は金銭問題でした。

お金の問題で苦しんでいた女教師は、校長に相談して――夜逃げしたのです。

校長は彼女を逃がすべく、水泳の授業中、彼女と入れ替わったのです。

水泳はキャップとゴーグルで、顔が判然としないから可能だった(苦しいですよ、作者さん?)。

とはいえ、第三章は伏線が見事で、何より人情味あふれる物語に仕上がっています。

第四章・33人いる!

楓から当日の教室配置図を見せられた祖父は、英会話のグループが机の横同士ではなく、縦だったことを見抜きます。

そして教室後方の生徒がいなかったことにも。

実はその生徒は不登校でした。

ハリーは不登校の生徒を登校させたいと必死でした。

その努力の甲斐あって、不登校の生徒は今日、ついに登校することに。

ハリーはその生徒が入ってきやすいように、怖い話をしたのでした。

そして、ロンが耳にした女の涙声は――楓の声でした。

卒業する子ども達を見て、楓は涙ぐんでしまい「駄目だ。寂しい」ともらしてしまったのでした。

第五章・まぼろしの女

祖父は、現場が麻薬取引の現場であることを見抜きます。

被害者の汗のかき方など……からでした(苦しいですよ、作者さん?)

取引がもつれた挙句、事件は起きてしまったのです。

警察官がタイミングよく現れたのは、実は麻薬の取り締まりのためでした。

祖父はまた、ウォーキングママがアルコール中毒であることも見抜きます。

口を両手で押さえていたのは、酒臭い息を隠すため。

彼女は岩田に好意を抱いており、彼の前では恰好をつけるため、キビキビと歩いていたのだと……。
(小西先生、苦しいです……)

彼女が目撃者と名乗り出なかったのは、離婚調停中だったから。

この日は雨が降っており、彼女はきっと飲酒運転で子どもを迎えに行ったのだと、祖父は語ります。

そして祖父は楓に、事件と同じ曜日、禁酒外来がある病院を探すようにと伝えたのでした。

こうしてウォーキングママは見つかり、岩田は釈放されます。

一方、四季は楓に好意を伝えたのでした。

終章・ストーカーの謎

祖父は親バカに、ストーカーについての推理を聞かせます。

ストーカーは楓の電話番号と住所を知っている男性。

それはつまり、祖父の緊急連絡先として楓のそれらが張り出されたこの家に出入りする者。

つまり、可能性があるのは、親バカともう一人のリハビリスタッフです。

祖父は、ストーカーが言語聴覚士の親バカであると、本人に推理を聞かせます。

まず、楓の髪の毛をストーカーが持ち去ったのに、ヘアブラシに指紋が無かった点。

もう一人のリハスタッフは素手で、親バカは常に手袋を着用しています。

さらに。

ストーカーを目撃した岩田が彼を追いかけても追いつけなかった点から、陸上経験者が怪しい点。

親バカはかつて、祖父に”十種競技”を正確に”じっしゅきょうぎ”と呼べた”前科”があります。

他にも体臭にバニラの香りがする点から、親バカがプロテインを愛飲している点を見抜いたり。

ここで親バカが馬脚を表すも、祖父、そして駆け付けた岩田と四季が彼を制圧したのでした。

「名探偵のままでいて」感想


本作、重厚な本格ミステリではありません。

しかし、終章で散り散りだった伏線が見事に回収される下りは、胸がスーッとしました。

一流のミステリはやはり、伏線回収が本当に見事なのです。

本作の評価で、辛口をつける方もいるでしょう。

それはおそらく”後出しジャンケンが多い”ことが原因です。

これは、このミス大賞の最終選考でも議論された点です。

とはいえ、全てが後出しジャンケンでもなく、全てに一応、伏線はあります。
(居酒屋の女将が元盗賊なのは、完全に後出しジャンケンですが)

安楽椅子探偵なので、こじつけもあります。

しかし、それを凌駕する伏線回収、そして何より――温かい人情にあふれているのです。

そして、恋愛小説としても一級品であることは保証いたします。

作者の小西マサテル先生のご紹介「ナイナイ・岡村隆司さんの友人」

作者の小西マサテル先生のご紹介「ナイナイ・岡村隆司さんの友人」

作者の小西マサテル先生のご紹介「ナイナイ・岡村隆司さんの友人」

引用:https://news.1242.com/article/391381

作者の小西マサテル先生をご紹介いたします。

作者の小西マサテルさんは現役の放送作家でもある。
ラジオ番組「ナインティナインのオールナイトニッポン」の構成も務めており、
今作の執筆中にナインティナインの岡村隆史さんに読んでもらいアドバイスを受けたという。
岡村さんは本の帯にも「祖父との会話は宝物。そんな素敵なミステリー」とコメントを寄せている。

引用:https://news.yahoo.co.jp/articles/79931b0fac0f470a9aa612d7b41c1cc167c37546

小西先生は、人気ラジオの放送作家なんですね。

そんな小西先生は、1965年、香川県で生まれました。

落語研究会でウッチャンナンチャンの南原清隆さんと知り合うなど、お笑い芸人と縁が深い方です。

明治大学文学部をご卒業されているので、頭の良い方です。

ちなみに、本作の祖父は小西先生のおじい様がモデルだそうです。

実際にレビー小体型認知症を発症しておられたそうです。

そうした実体験が、認知症の高齢者への温かい描き方に繋がっているんですね。

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