「年寄りの世話をするために、あなたと結婚したんじゃないわ!」
長男の嫁の慟哭(どうこく)が聞こえきます。
「結婚したら別居するなんて! この親不孝者!」
嫁姑のしがらみを嫌って家を出る夫婦に、舅と姑が怒鳴ります。
長男の嫁に介護を無理強いした結果、悲惨な事件が起きるようになりました。
「介護殺人」といいます。
また舅と姑との同居を嫌って別居する夫婦が増えた結果、核家族化が進行しています。
こうして「高齢者の介護は外部委託する」「認知症高齢者の援助は地域ぐるみで行う」などの必要性に迫られました。
そうした背景から設計されたのが「介護保険」です。
この記事は
「介護保険って何? 今さら恥しくて聞けない」
「何歳になったら、介護保険料はいくら払わないといけないの?」
「介護保険を利用したいけど、サービスはどんな種類があるの?」
「高齢化で介護保険の仕事は食いっぱぐれが無いだろうけど、どうやって働くの?」
という疑問にお答えした記事です。
「保険」と名前がつくサービスは、世の中にあふれかえっています。
民間企業の保険は、使うも使わないも自由です。
ところが2種類の保険だけ、保険料の納付が強制されます。
それが医療保険と介護保険です。
医療保険は毎月、保険料を納めることによって、病院の費用を7割引きするサービスです。
歯医者にも適用されるので、身近なサービスです。
医療保険には必ず、加入しなければなりません。
この強制を「国民皆保険」といいます。
介護保険もまた、40歳から払い込みが始まる「強制保険」です。
ところが、介護保険は利用する人としない人がいるので、ピンときません。
自分の親に使うのか自分に使うのかも、あやふやです。
介護保険料を給料から天引きされる理由を知らないと損した気になるので、介護保険の制度を見ていきましょう。
制度の運営主体(保険者)は、全国の市町村と東京23区(以下市区町村)です。
運営費用は給料から天引きする保険料と税金です。
40歳になると、強制で介護保険に加入します。
64歳までは月々の医療保険料に上乗せで徴収されます。
お勤めの方は、給与で介護保険料が自動計算されます。
ちなみにこの場合の保険料ですが、雇い主と折半になります。
半分は雇い主が払ってくれるので、負担は小さいです。
自営業の方は、所得割・均等割・平等割・資産割の4つで算出されます。
ただでさえ計算がややこしいのに、自治体によって計算額が異なります。
65歳以上になると、年金から徴収されます。
鬼のようにややこしい計算と取り立てが40歳から始まります。
介護保険の加入者には医療保険の保険証とは別に、介護保険証が交付されます。
介護保険証は「私はキチンと介護保険料を納めていますよ」という証拠です。
「え? 私、もらってないけど?」
はい、もらってない方が大半だと思います。
介護保険証が交付されるのは、年齢によって異なります。
・40歳以上65歳未満⇒介護保険を実際に利用するときに交付される
・65歳以上⇒打率10割で交付される
意外かもしれませんが、40歳から介護保険のサービスを受けることは可能です。
ただし後述する「特定疾病」を患っている方限定です。
介護保険証をもらっても、それだけでは介護保険のサービスは受けられません。
「介護保険認定」という調査を受け、医者の診断書に「介護保険のサービス要りますよ」との結果を受けて初めて、サービスの利用が可能です。
実際に介護保険のサービスを受ける前に、歴史を振り返っておくと
「なるほど。こういう問題点があって介護保険が生まれたんだな」
と分かりやすくなります。
老人福祉政策がついに始まりました。
1962年(昭和37年)「訪問介護(ホームヘルプサービス)」が創設されました。
1963年(昭和38年)「老人福祉法」が制定されました。
訪問介護が法制化され、特別養護老人ホームのサービスが開始です。
1973年(昭和48年)老人医療費無料化
1978年(昭和53年)短期入所生活介護=ショートステイのサービスが開始
※私が生まれました。
1979年(昭和54年)日帰り介護=デイサービスの開始
社会的入院や寝たきり老人が問題となりました。
※社会的入院=入院する必要が無いのに「退院先が無い」「家族が面倒を見ない」などの理由でダラダラと入院すること。
1982年(昭和57年)老人保健法の制定。
老人医療費が一部、自腹で支払うことになりました。
1989年(平成元年)消費税3%が開始
「ゴールドプラン」の策定
※ゴールドプラン:高齢者保健福祉推進十カ年戦略。「施設を緊急に整備すること」と同時に「在宅福祉」を推進する
ゴールドプラン推進するとともに、ついに「介護保険」が誕生しました。
1994年(平成6年)厚生省に高齢者介護対策本部を設置(介護保険を作るためのチーム)
新ゴールドプラン策定(目標の上方修正)
1996年(平成8年)介護保険創設に向けて連立与党が政策で合意
1997年(平成9年)消費税が3%⇒ 5%に引き上げ
介護保険法が成立
介護保険制度がいよいよ本格的に実施されます。
2000年(平成12年)介護保険法が施行
介護保険はいまだに賛否両論ありますが、運用せざるを得ない状況に追い込まれました。
市町村がサービスの種類を決めるので、選択の余地がありませんでした。
収入に応じて利用料金を支払う仕組みだったので、 中高所得層の懐に優しくありませんでした。
サービスを利用するにあたって、行政が所得を調査します。
そのためサービス利用への心理的ハードルが高かったのです。
市町村が直接サービスを提供するので、 競争原理が働かず、サービスの質は低かったです。
医療が目的ではなく、自宅で介護が受けられない高齢者が入院することで、医療費が逼迫しました。
自宅で適切な介護サービスが受けられる体制作りが急務になったのです。
介護保険のサービスを受けると言っても「?」だと思います。
実際に介護保険のサービスを利用する段取りを紹介します。
介護保険の申請は、 介護保険証を持って市町村役場の窓口へ行きます。
窓口でもらった申請用紙を記入して、また窓口へ行って提出します。
家族の方でも申請できます。
お一人の方でも、あらかじめケアマネージャーと契約し、申請してもらうことができます(申請代行といいます)。
医者に診断書を書いてもらうのを忘れないようにしましょう。
申請してから約2週間ほどで、市町村の調査員が調査に来ます。
入院中であれば、病院に来ます。
この調査も、ケアマネジャーが代行することができます。
癌の方は程度に応じて、早めに調査に来てもらうことができます。
調査といっても「今日は何日ですか?」「右手は上がりますか?」程度なので、緊張する必要はありません。
この調査結果と医師の診断書をもとに、認定結果が出ます。
認定結果は以下の3種類です。
・非該当⇒元気なので介護保険は不要
・要支援1,2⇒ ちょっぴりサービスが必要
・介護1~5⇒がっつりサービスが必要
※ベッドのレンタルを利用したい⇒介護2が必要
※施設に入所したい⇒介護3が必要
※癌末期の方は認定結果を待たずに介護保険のサービスを利用できます
40歳以上65歳未満の方が介護保険のサービスを利用するためには、次の特定疾病を患っていることが条件になります。
1)がん(末期)
2)関節リウマチ
3)筋萎縮性側索硬化症(ALS)
4)後縦靭帯骨化症
5)骨折を伴う骨粗しょう症
6)初老期における認知症(アルツハイマー病、脳血管性認知症等)
7)進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
8)脊髄小脳変性症
9)脊柱管狭窄症
10)早老症(ウェルナー症候群等)
11)多系統萎縮症(シャイ・ドレーガー症候群等)
12)糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
13)脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等)
14)閉塞性動脈硬化症
15)慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎等)
16)両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
介護保険のサービスは3種類に分けることができます。
要支援・要介護の認定を受けた方が利用できます。
居宅サービスの中でも3種類に分かれます。
訪問介護:ヘルパーが自宅に来て、生活支援(買い物や掃除) や介護(食事、排泄)を提供します。
入浴や簡単なリハビリを受けられます。
訪問看護:看護師が自宅に来て、医療行為を受けます。癌の方ですと、疼痛コントロールに訪問看護は欠かせません。
他に、福祉用具サービスがあります。
デイサービス:送迎があります。施設で、入浴や食事の提供を受けます。
デイケア:送迎があります。デイサービスと比較して、リハビリに特化しています。
期限がある施設入所サービスです。
施設入所とほぼ同じサービスが受けられます。
入所したい施設で利用して、自分に合うかどうか確認することも可能です。
施設サービスは4種類に分かれます。
認定結果が3以上でなければ利用できません。
実生活に、最も近い環境で暮らします。
排泄や入浴の他、 レクリエーションがあります。
医療処置とリハビリに特化しています。
入所の期限はありますが、 施設によって差があるので、入所前に施設の相談員に質問してください。
医療措置に特化した施設です。
病院に併設されていることが多いです。
最も新しい施設サービスです。
3つの施設のいいとこどりをしたサービスです。
2005年に新設されたサービスです。
要支援・要介護どちらでも受けられます。
サービスの種類は先述の3つと変わりませんが、認知症ケアが手厚いのが特徴です。
このサービスは、その自治体に現住所がある方のみ、使用できます。
介護保険は3年ごとに見直しがあります.
2021年に介護保険の改正が行われたので、最新の情報をお届けします。
報酬は「+0.70%増」と微増でした。
なお介護報酬改定には、5つの柱があります。
①感染症や災害への対応力強化
②地域包括ケアシステムの推進
③自立支援・重度化防止の取組の推進
④介護人材の確保・介護現場の革新
⑤制度の安定性・持続可能性の確保
要点だけをご説明します。
高齢化に歯止めがかからないので、介護保険の仕事は需要を増すことはあっても、無くなることはありません。
ただし、知識と倫理性は求められます。
それを担保するのが「国家資格」です。
「介護の現場で働きたい」のであれば「介護福祉士」という国家資格は必須です。
ユーキャンの介護福祉士講座
介護福祉士の講座は多いのですが、ユーキャンは過去6年間12,000名を合格した実績を誇ります。
また質問と添削があるので、勉強していて孤独になりません。
相談援助業務に就きたいのであれば「社会福祉士」一択です。
2004年度~2019年度までに、ユーキャンからなんと6,973名の合格者を輩出しています。
受講生の88%が働きながらチャレンジしていて、この実績は驚嘆です。
介護福祉士か社会福祉士を取得して5年間働き、介護保険の調整役である「ケアマネジャー」になると、本当に食いっぱぐれは無くなります。
ユーキャンのケアマネジャー講座
ユーキャンのケアマネジャー講座は、81,000名の合格者を出した実績があります。
月々3,900円と安価な値段で始められますし、質問と添削があるので独学より遥かに効率はいいです。
資格を取ったら(現在持っていたら)「ジョブメディカ」で無料エントリーして、求人情報を探しましょう。
「ジョブメディカ」は最大4.8万円の継続お祝い金をもらえるので、初任給が安くても助かります。
中身が見えにくい福祉業界ですが、「ジョブメディカ」はキャリアアドバイザーが間に入ってくれるのブラックに勤めなくて済みます。
お勤めの方で、今の職場を辞めにくいのであれば「退職代行」を利用しましょう。
【退職代行ガーディアン】
ガーディアンは労働者のために運営されている組織なので「簡単/低価格/確実」を”唯一”合法的に可能にした退職代行サービスです。
退職代行は新規の安い事業者に依頼すると揉めるので「ガーディアン」に依頼するのが無難です。
女性看護師の方で「今は包括支援センターに勤務しているけれど、病院に戻りたい」のであれば、退職代行でサッと辞めて転職しましょう。
女性の退職代行【わたしNEXT】
わたしNEXTはたった1分で申し込みと相談ができるので重宝します。
特に看護師の方は転職が多いので「世界初のサブスク料金プラン」で利用できる退職代行サービス「ヤメホー(サブスク退職)」は使いやすいサービスです。
月額3,300円という少ない負担で退職代行を年2回利用できます。
「高齢化は問題」と言われていますが、雇用が発生するのも事実です。
自分らしく生きるために、あなたも私も時代を上手く利用して生きていけたらいいですよね。