「生活保護」と聞くと、どんな感想を持ちますか?
「恥ずかしい?」「何か嫌だ。なぜかは理解できないけど」「働けよ!」。
生活保護は「最後のセーフティーネット」と呼ばれています。
「働けよ!」と言う方にお聞きしたいのですが、病気や障害で働けない人は、どうすればいいのでしょうか?
今回は生活に困り、生活保護の申請を考えている方向けの記事です。
また今現在、「生保CW」や「救護施設」で勤務している方へ向けても、メッセージを送ります。
気になる「生活保護はいくらもらえるのか」について、元生活保護CWの私がご説明します。
2019年10月時点の生活保護受給者は約207万人です(厚生労働省調べ)。
割合としては日本人の実に160人に1人が生活保護を受給しています。
生活保護がいくらもらえるかは、 その方の最低生活費によって異なります。
なぜなら生活保護は、最低生活費を保証する制度だからです。
仮に生活費が10万円だった場合、10万円が支給されます。
つまり生活保護は「ボーナス」や「お小遣い」ではなく、徹底的に「生活費」として支給されます。
この点を勘違いして「パチンコや飲酒のお金に使いたいから」という方を大勢見てきました。
やめましょう。
それは生活保護の「不正受給」です。
本当に生活保護を必要としている方が受給できなくなかったり、生活保護費の削減に繋がってしまいます。
年金の支給を受けている方でも、生活保護は支給されます。
働いて給与がある方でも、やっぱり生活保護費の支給は受けられます。
ただし生活保護費は「最低生活費の保障」です。
最低生活費が10万円、1ヵ月の年金が5万円の場合、生活保護費は5万円が支給されます。
これは給与にも、同様のことがいえます。
生活保護を担当する「福祉事務所」は、生活保護の申請にあたって必ず「資力調査」を行います。
資力調査とは「通帳にいくら持っているのかな? 年金はいくらもらっているのかな?」を職権を使って調べることです。
年金はこの「資力調査」に該当するため、正直に申請しましょう。
給与も同じですが、保護費の支給に「ダブり」が生じた場合、保護費を返還することになります。
生活保護CWからの印象は確実に悪くなるため、本当に「正直な申告」をお薦めします。
また福祉事務所は1年に1度、税務課で「所得調査」を行います。
この調査では「年金額」も「給与」もバレます。
実際に私も担当していた受給者の方で、申告洩れをいくつも発見しました。
この場合、保護費の返還どころか、ペナルティとして余計に福祉事務所へお金を払う必要があります。
最悪、保護費の停止に繋がります。
生活保護の申請時と受給時には必ず、収入を正直に申告しましょう。
生活保護は、誰もが受給できるわけではありません。
誰もが申請はできますが、受給するためには一定の要件があります。
例えば障害や疾病などで働くことが困難な方です。
しかし働くことが困難でも、以下の場合は生活保護を受給できません。
気をつけたいのは最後の「家族・親族からの援助」です。
「援助を受けられないから生活保護を申請するんだ!」という声が聞こえてきます。
それは百も承知で、気をつけていただきたい点です。
生活保護を申請すると、申請したことが家族や親族にバレます。
福祉事務所が「扶養調査」を行うためです。
この「扶養調査」の範囲は大体、以下のとおりです(福祉事務所によって若干の差あり)
2021年3月30日、厚生労働省は「生活保護の扶養照会に関する事務連絡」として、「課長通知」を出しました。
内容をザックリ説明すると「本人がイヤなら、扶養調査は不要」です。
この背景には、DVから逃れるために生活保護を申請したのに「扶養調査」によって、被害者の個人情報が漏洩する――などなどがあります。
また生活保護CWとしても、この「扶養調査」は重労働でした。
まず、市民課で申請者の戸籍を公用で請求します。
その戸籍に基づき、申請者の扶養者の有無を確認します。
さらに、扶養者の現住所の割り出し⇒扶養者への調査書発行⇒返ってくる返事は「面倒を見ません」ばかり。
これを1年に1回、全受給者で行います。
重労働でした……。
福祉事務所としても、「扶養調査」は重荷です。
撤廃は生活保護CW、受給者ともに「win-win」の関係です。
1日でも早い「扶養調査の撤廃」を求めます。
「生活保護の受給が決まった!」と喜ぶのは早計です。
何事も一長一短。
生活保護も例外ではなく、デメリットは当然あります。
年金や給与、通帳の金額など、とにかく「お金」を生活保護CWによって監視されます。
これは「福祉事務所」が意地悪で行っているわけではなく、法律に明記されているからです。
税収が落ち込むにつれ、国の「保護費支給を下げよ」の圧は高まるばかりです。
自然と「給与がある人の保護費は下げなければ」「年金の支給分は保護費を減らします」となります。
これは当然のことですが、通帳の中身を46時中、監視されるのは気分がいいものではありません。
生活保護を申請した場合、生活保護CWが自宅訪問を行います。
「同棲者はいないか?」「高級品は置いていないか?」を徹底的にチェックされます。
自宅の見取り図まで書きます。
ジロジロと我が家を見られたくない方は、この点に注意してください。
生活保護は原則、車を持てません。
車を持っていた場合、売却するよう指示されます。
「就労のため」「病院受診のため」等、正当な理由を除き、車の所有は認められません。
売却することになります。
私が生活保護CWだったとき、最も多かったトラブルがこの「車の所有」でした。
「車は売ります」と言って申請したのに、生活保護の支給が始まってからも車を売却しない方が複数、いました。
車の所有はあきらめましょう。
車の購入・維持費があれば、生活できるはずです。
これは、その方が持つ自宅の価格にもよりますが。
ケースによっては「自宅を売却するように」と生活保護CWから指示が入ります。
私の経験では、老人ホームに入っていた方が自宅を売却しました。
その売却資金が多額だったため、生活保護は打ち切りとなりました。
このケースでは、弁護士が成年後見人となって手続きを進めていたため、揉めませんでした。
ただ、生活保護は「現住所」が無いと申請すらできません。
家を売った結果、住む場所が無いのでは話になりません。
ですから現実的には「家を売れ」とは指示されないでしょう。
ただし「家賃が高いので安い賃貸に住みなさい」という指示は受けます。
この場合、安い賃貸は自分で探す必要があります。
生活保護を申請する場合、適切な家賃の相場がいくらなのか、福祉事務所で質問してみましょう。
生活保護は「最低生活の保障」です。
よって基本的に、義務教育までしか面倒を見ません。
とはいえ事実上、高校は義務教育化しています。
子どもがいる家庭では、進学に備えて、貯金をしているでしょう。
この場合、「進学する学校の費用」を算出して、福祉事務所へ提出しましょう。
それでも進学が認められない場合、裁判で争うしかありません。
生活保護を現場で行うのは、地方自治体です。
しかし「生活保護の事務」は本来、国が行う事務です。
これを「団体事務」といいます。
国が行う事務は、憲法と法律に定めがあります。
憲法第25条を「生存権」といいます。
25条で定められているとおり「最低限度の生活」を保障します。
つまり保護費は「お小遣い」ではありません。
では、主要な法律を見ていきましょう。
生活保護は全ての「日本人」に適用されます。
「日本人」であれば、生活が苦しくなった「過去」は問いません、という内容です。
※日本に住む外国人の方には、生活保護が準用されます。
などなど、「フルパワーでも生きられませんか?」という内容です。
つまり申請時に「資産活用」と「稼働能力」は、かなり厳しくチェックされます。
生活保護は「申請主義」です。
生活に困っていても、黙っている場合、保護は受けられません。
生活が苦しい場合は必ず、お住まいの市町村役場に相談してください。
「職権保護」もありますが、あまり期待しないでください。
生活保護を申請する場合、単位は「世帯」で調査を受けます。
つまりAさんの生活が厳しくても、Aさんの妻がセレブなら、生活保護は受けられません。
同居して世帯分離しても、自宅訪問で見つかります。
そもそも生活保護CWは戸籍や住民票を公用で請求するので、100%バレます。
ご家族とよく話し合ってから生活保護を申請してください。
古いデータですが、生活保護の不正受給が、人数・金額ともに増加しているのが読み取れます。
2021年7月1日、生活保護を不正受給したとしていて、京都市の方が逮捕されました。
この逮捕は以下が原因です。
生活保護で「ズル」をすれば、保護停止どころか「逮捕」されます。
必ず、生活保護CWの指示に従いましょう。
大阪の生活保護で問題になっているのが「ホステス現金手渡し」です。
ホステスをしている方が、給与を現金で受け取り、福祉事務所に申告しない事例です。
私が経験した事例では、「保護費をもらったまま行方不明」がありました。
ですが。
役所の「回覧」で、全自治体に「ブラックリスト」として名前が出回ります。
その受給者は関西に移動していましたが、呆気なく関西の市役所で発見されました。
関西の市役所でも、その方は生活保護を申請しょうとしていました。
しかし「回覧」があったため、市役所職員がその点を尋ねると逃げました。
生活保護は最後のセーフティネットと言われています。
障害や病気で働けない方にとって、無くてはならない存在です。
だからこそ、本当に生活保護を必要としている方にとって、受給しやすい環境が大切です。
生活保護の不正受給は、回り回って、働けない方々を直撃します。
国民一人一人が「生活保護」を大切にしましょう。