2022本屋大賞を受賞したのが「六人の噓つきな大学生」でした。
大賞は「同志少女よ、敵を撃て」に譲ったものの、ブランチBOOK大賞2021は堂々の受賞です。
日常系ミステリーですが、ハラハラドキドキが止まらない名作です。
伏線職人の浅倉秋成先生の作品だけあって、怒涛の伏線回収が快感の作品に仕上がっています。
さらに「ヨウイチ」という謎の人名が出てきて、読者は大パニックです。
今回はそんな「六人の噓つきな大学生」を徹底したネタバレ考察します。
未読の方は見出しの「レビュー」まで、お読みください。
一流大学に通う、六人の就活生がいます。
彼等彼女等が狙うのは、給料50万円をくれるIT会社の内定です。
最終選考まで残った彼等に課されたのは――「内定者1名をグループディスカッションで自分達で決めよ」という、パワハラでした。
最終選考の会場で、彼等六人は、内定を得るべくブリッ子しまくります。
ところが。
会場で見つかった、6通の封筒。
その封筒の中には何と、彼等の汚い過去が写真つきで入っていたのです。
大荒れのグループディスカッション。
テーマは就活を越え、月の表裏を見るように、人間の表と裏を残酷なまでに見せつけていきます。
誰が封筒を準備したのか?
動機は?
誰が内定を勝ち取るのか?
犯人は?
そして犯人があかされた後、とんでもない展開が――「これが人間の裏表」。
ネタバレ考察を、六人のキャラクターごとにご紹介します。
バッキバキのネタバレなので、未読の方はご注意ください。
順番ですが、嶌が絶対に1番になります。
嶌にまつわる3つの点が最後の最後に明かされるので、他の5人についても騙されてしまいます。
この事実を作者が伏せているので、他の5人の行動が謎だらけになります。
嶌は交通事故が原因で走れず、びっこを引いています。
周囲が歩行を見れば一発で分かるほど、足は悪いです。
シルバーシートには、どこかのオバサンに怒鳴られたので、なかなか座れません。
作品を通して登場する歌手で薬物中毒の「相楽ハルキ」は、嶌の兄です。
この兄が事故を起こしたので、嶌は足が不自由になりました。
波多野が嶌に投票し続けた理由を妹が「好きだから」と説明した際、嶌は「鋭い!」と感服します。
このことから、嶌は久賀が好きだったことが分かります。
犯人の久賀より、悪い奴です。
嶌の兄の情報を持っていたので、実はIT会社にそれを送り、採用を再考するよう画策していました。
結局、その文書は郵送せず、さらにロッカーに残して、嶌に見せつけます。
悪人というより、ドSですね。
波多野は最も早く、久賀が犯人だと見抜いていました。
自分の飲酒写真をパクッたのが、久賀しかいなかったからです。
下戸の久賀にしか、その写真を選びようがなかったから――苦しいですよ、作者さん……。
波多野ではなく、嶌です。
波多野はすでに、病死しています。
森久保は、浅倉秋成先生の最大の失敗です。
高齢者を騙す片棒を担ぎながら……「お金に困っていたから」「母子家庭だから」。
母子家庭だから同情して、罪を見逃していいのでしょうか?
森久保の人物造形が、本屋大賞を逃した原因になってしまいました。
彼だけ最後まで、ステレオタイプの人間だったのです(ガリ勉)。
森久保でひねっていれば、本屋大賞を受賞した「同志少女よ、敵を撃て」に迫れたでしょう。
いじめていたのは、袴田ではありません。
自死した生徒が他の生徒をいじめており、袴田は天誅を加えただけです。
ただ、それが原因で自死したので、やっぱり袴田は……苦しいですよ、作者さん?
公園で野球をしている子ども達のボールが高齢者を直撃しかけました。
そこで袴田は子ども達を厳しく叱りながらも、野球の素晴らしさを語るのでした。
未知のモノ全てに好奇心旺盛で、負けず嫌いな性格です。
お水でバイトしたのは、海外のボランティア活動に参加するためでした。
嶌は足が悪く、シルバーシートに座れません。
そこで優しい矢代は、自分がシルバーシートに堂々と座ることで、嶌に着席を促したのです。
ブログで、発展途上国を紹介する会社を興しました。
それが1回目のインタビューでは書かれておらず、とっても性格ブスに仕上がっています。
犯人です。
学生時代の恋人を妊娠させたのは実話ですが、相手は「久賀君をかばっていた」ので、そんなに悪い人ではありません。
犯行の動機は、現在、久賀が勤めている会社の社長=大学の同期は非常に優れているのに、IT会社は2次で落としたから……です。
さらに、嶌が自分を好きなことに気付きながら放置し、新しい恋人と結婚しています。
同性愛者というより、両刀使いですね。
足が悪い嶌のために、会う場所や駐車場所に気を使うナイスガイです。
嶌の足が悪いので、気を利かせただけです。
作者の騙しですね。
ラスト、不意にあらわれるのが人名「ヨウイチ」です。
波多野祥吾の死後、ロッカーに入っていたファミコンのカセットに名前があった「ヨウイチ」。
波多野祥吾が「俺の最大の罪は子どもの頃、ファミコンのカセットを借りパクしたことで……」とあります。
そのカセットに「ヨウイチ」と書かれています。
つまり「ヨウイチ」は、波多野祥吾の小学生の友人です。
ですから小説には一切、出てきません。
六人の嘘つきな大学生に寄せられた浅倉秋成先生とみんなの声をご紹介します。
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【舞台化】六人の嘘つきな大学生:会場案内有!高野麻里佳に山根綺!
本屋大賞2022の結果を見てから、みんなの声をご紹介します。
学校や近所の図書館で、本屋大賞が開催されますね。
「知識の最前線にして最後の砦」である図書館に本屋大賞の輪が広がるのは、喜ばしいばかりです。
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読んでないけど
色んなとこで話を聞くに、伏線つうより後出し連続拳のようだな
そういうの増えたなぁ
コメントありがとうございます。
本作は不快指数高い後出しジャンケンはないですね。一応全てに伏線はあります。無理くりやこじつけ派まあ多少は(笑)。